ミヤコグサについて

ミヤコグサ(Lotus japonicus)は、日本、韓国、中国をはじめとするアジアの温帯地域に自生す多年生のマメ科草本です。ミヤコグサは、ゲノムサイズが小さい、自殖可能な2倍体で世代期間が3 - 4か月と短い、種子生産が多い、組織培養が可能でアグロバクテリウムによる形質転換が可能、さらに、種内、種間の人工受粉が可能で遺伝的な解析可能などの特徴を持つため、最初にアグロバクテリウムによる形質転換の論文が報告された1992年以来マメ科のモデル植物として利用されています。ミヤコグサはマメ科のモデル植物として根粒菌、菌根菌との共生などの植物-微生物の相互作用研究をはじめとする様々な研究分野で利用されており、多様な表現型を持つ突然変異体も単離されています。ミヤコグサでは、岐阜市の長良川河畔由来のGifu B-129と沖縄県宮古島の東平安名崎由来のMiyakojima MG-20の2つの系統が実験系統として世界で利用されており、それらに加えて200系統を超える野生系統がNBRPミヤコグサ・ダイズから利用可能です。

ミヤコグサのゲノム解析は、MG-20を対象としてかずさDNA研究所で2001年から開始され、clone-by-cloneとwhole genome shotgun(WGS)法を組み合わせたサンガー法による配列解析で2008年にver1.0のゲノム配列情報が公開されました。その後、2010年に460クローン分の配列情報を加えて更新されたv2.5が公開され、2013年にIlluminaシーケンサーを用いたWGSの配列情報を加えて構築されたver3.0の配列情報が公開されています。これらの配列情報はかずさDNA研究所のミヤコグサゲノムデータベース(https://www.kazusa.or.jp/lotus/) から提供されています。

このデータベースでは、もう一つの実験系統であるGifu系統のゲノムを対象として、ロングリードのPacBioシーケンサーを用いて100倍のカバレッジで収集した配列情報を基に、Hi-CデータとRILsのリシークエンスで作成した高密度の遺伝地図情報を利用して構築した高精度のゲノム配列を提供するものです。得られた配列情報は554 Mbpで、そのうち549 Mbpが6本の染色体に対応するpseudomoleculesに配置されています。このGifu系統のゲノム配列情報はマメ科植物の機能ゲノム解析、比較ゲノム解析に貢献するとともに、NBRPの収集リソースを活用していく上でも基盤情報となるものです。